整形外科に重点を置いた動物病院
私が以前勤務していました病院では、整形外科症例を非常に多く扱っていたところで、厳しい環境にありましたが、そのぶん、貴重な経験を積むことが出来ました。現在、当院では一般的な疾患に加えて、整形外科疾患を専門的な立場で診させていただいています。これも全て、当時の経験があったらこそです。
当院においては、整形外科的な疾患に関して、そのほとんどの疾病について治療の道筋をたてることが可能と考えています。この分野につきましては、現在も日本獣医生命科学大学にて研鑽を積んでいます。手術設備の問題もあり、非常に高度な外科手術については大学病院にご紹介するケースもありますが、出来る限りこの病院で診てあげたいと考えています。
よくある整形外科疾患COMMON CASES
大腿骨骨折
大腿骨骨折とは、大腿骨の下部で膝関節に近いところの骨折です。交通事故や高所からの墜落など、強い衝撃が原因として起こります。成長期の場合には成長板にあまりダメージを与えたくない。関節内骨折なので解剖学的に正しい整復をしたい症例です。
橈尺骨骨折
橈尺骨骨折とは前腕骨折のことで、小型犬に多く見られます。完全骨折をしている場合は、ギブスでの治癒は難しく外科手術が必要となります。 体が小さいほど治るのに時間がかかることが多く、治癒が難しい骨折です。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、膝のお皿(膝蓋骨)が本来ある場所から脱臼してしまう現象です。脱臼に伴い後ろ足の痛み、骨の変形が起こることがあります。犬では小型犬種に多いですが、中型犬、大型犬種にも認められます。猫も稀ではありますが、認められることがあります。膝蓋骨の脱臼程度により、以下の4グレードに分類されています。
- グレード1:手で外すことができるが、自然に戻る。
- グレード2:自然に外れたり戻ったりを繰り返している。
- グレード3:常に外れている。手で戻すことはできるが、離すと再度脱臼する。
- グレード4:常に外れている。手で戻すことができない。
どの程度で手術をするかの判断はひざの状態により判断が変わってきます。通常はグレード2から手術を検討することが多いです。グレード3・4は早期の手術が必要と考えられています。当院では膝蓋骨脱臼のセカンドオピニオンも承っております。膝のことで不安な飼い主様は一度ご検討ください。
股関節形成不全
股関節形成不全は発育性の異常で、大型犬に多くみられる病気です。原因としては遺伝的な要因が強いと言われますが、稀に骨の栄養関連、運動などの環境が原因の場合もあります。通常は両側性に発症します。症状としては「後ろ足のふらつき」「両後ろ足で同時に地面を蹴るように走る」「腰を左右に大きく振るように歩く」などがあります。
前十字靭帯断裂
膝関節中には大腿骨と脛骨(すねの骨)をつなぐ靭帯が2本あります。それぞれを前十字靭帯、後十字靭帯を呼びます。この靭帯は膝関節の安定化に必要な靭帯です。
犬は残念なことにこの前十字靭帯の損傷が非常に多く、その傾向は大型犬、小型犬に限りません。これは骨の形態、膝蓋骨脱臼をおこしている、激しい運動に伴う、外傷など原因は様々です。
当然に後肢の歩行に異常が認められますが、傾向として突然症状が現れることが多いです。診断は触診とレントゲン検査で行いますが、部分断裂などの軽度な損傷の場合は関節鏡での診断が必要になることもあります。
十字靭帯の治療には外科手術が必要となります。現在世界的に推奨されている手術は、脛骨高平部水平化骨切術(TPLO)です。そのほか、人工靭帯などを使用した整復方法もありますが、長期経過はTPLOの方が成績が良いです。
当院ではほとんどの十字靭帯断裂の症例にはTPLOを実施し、良好な成績を収めております。十字靭帯断裂の診断には専門的な知識と経験が必要になります。当院ではセカンドオピニオンを承っております。不安なことがあれば診察させていただきます。ご検討ください。