DISEASE
No.
01

犬・猫の骨折

FRACTURE

骨をつなぐだけではなく、もう一度しっかり歩けることを目指して。

骨折の形・部位・年齢・体格を詳しく評価し、正常な骨の形と関節機能の回復を目標に治療します。

骨折は、できるだけ早く
適切な治療を行うことが大切です

交通事故や転落だけでなく、抱っこからの落下やソファからのジャンプなど、日常生活の中でも骨折は起こります。

特に小型犬や子犬では、比較的小さな力でも骨折することがあります。

骨折
術前計画
骨折片の安定化
骨癒合
歩行回復

診断から手術、入院、骨癒合の確認、
日常生活への復帰まで一貫してサポートします。

このような症状がみられます

骨折が疑われる場合は、無理に歩かせず、できるだけ早く受診してください

  • 突然、足を着かなくなった
  • 足を強く痛がる
  • 足が腫れている
  • 足の向き・形がおかしい
  • 触る・抱き上げると痛がる
  • 高い場所から落下した
  • 交通事故にあった
患部を何度も触ったり、ご自宅で無理に整復しようとしたりしないでください。

骨折の診断

骨折部だけでなく、外傷による全身への影響も確認します

身体検査

痛み・腫れ・変形・神経機能などを確認。交通事故や高所落下では胸部・腹部なども評価します。

レントゲン検査

複数方向から撮影し、骨折部位・骨片のずれ・関節への影響を確認します。

CT検査

関節内骨折や複雑骨折では、必要に応じて三次元的に評価し手術計画に活用します。

正確な診断が、その後の整復方法・固定方法・予後の見通しを考える第一歩になります。

骨折の治療

骨折の種類・安定性・年齢・体重・活動性などから治療方法を選択します

保存的治療

骨折の状態によっては、ギプスや外固定などで治療できる場合があります。

骨折部の安定性やずれ、動物の年齢・体格を考慮し、適応を慎重に判断します。

手術治療

不安定性が強い骨折や、関節に及ぶ骨折などでは手術が必要になります。

プレート・スクリュー・ピンなどを使用し、必要な安定性を与えます。

大切なのは「固定すること」だけでなく、血流や軟部組織を温存し、
骨が本来持つ治癒力を生かすことです。

手術前に十分な計画を立てます

骨折手術では、術前計画が治療の精度を高める重要な工程です

1

画像評価

レントゲン・必要に応じCT

2

整復計画

どのように骨を戻すか

3

インプラント計画

位置・サイズ・長さを検討

4

3Dモデル

複雑骨折では骨模型も活用

手術前に「どこを、どのように整復し、どのインプラントで固定するか」を具体的に検討します。

骨折が疑われる場合は、早めにご相談ください

最初の診断と治療計画が、その後の骨癒合や関節機能に大きく関わります

特に詳しい評価が必要なケース

  • 関節に及ぶ骨折
  • 骨片が複数に分かれた複雑骨折
  • 子犬・子猫の成長板を含む骨折

当院では、骨折の状態を詳しく評価し、
その子の将来の歩行や関節機能まで考えた治療を大切にしています。

骨をつなぐだけではなく、
もう一度しっかり歩けることを目指して。

DISEASE
No.
02

犬・猫の膝蓋骨脱臼

PATELLAR LUXATION

「時々足を上げる」「スキップする」——膝蓋骨脱臼のサインかもしれません

膝のお皿が外れるだけの
病気ではありません

膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨が大腿骨の溝から外れてしまう疾患です。

小型犬で多くみられますが、中型犬・大型犬や猫でも発生します。

症例によっては、大腿骨や脛骨の曲がり・ねじれなど、後肢全体の骨格異常が関係します。

脱臼時の患肢の挙動

  • 大腿骨の外旋
  • 脛骨と足底の内旋
  • 膝関節外側の拡大
  • O脚
  • 趾端の内方変位
後肢の骨格変形
出典:Tomo Y, Edamura K, et al. Vet Comp Orthop Traumatol. 2022;35:143–151.

膝蓋骨はなぜ大切なのでしょうか

膝蓋骨は膝の曲げ伸ばしを助け、正常な歩行に重要な役割を持ちます

NORMAL

正常に膝が伸ばせる

大腿四頭筋 → 膝蓋骨 → 膝蓋靱帯 → 脛骨粗面が適切に並び、膝蓋骨は滑車溝の中をスムーズに動きます。

LUXATION

脱臼すると膝が伸ばせなくなる

膝蓋骨が内側または外側へ外れ、膝の正常な動きが損なわれます。脱臼を繰り返すと脛骨がねじれて痛みや歩行異常につながります。

主な症状

「脱臼している=必ず手術」ではなく、症状や変形を総合的に評価します

後ろ足を上げる犬

このような症状

  • 後ろ足を上げる
  • 数歩スキップする
  • ジャンプや階段を嫌がる
  • 運動後に痛がる
  • 徐々に歩き方が悪化

膝蓋骨脱臼の診断

膝蓋骨だけでなく、膝関節の安定性や後肢全体のアライメントを評価します

整形外科的検査

脱臼方向・戻りやすさ・痛み・可動域・筋肉量・歩様を確認

レントゲン検査

膝関節だけでなく、大腿骨・脛骨を含めて骨格変形や関節炎を評価

CT検査

骨の曲がりやねじれが強い症例、再手術症例などで三次元的に評価

手術が必要な場合には、画像検査を治療計画にも利用します。

骨格変形・前十字靱帯疾患との関係

重度例や急な悪化では、膝蓋骨以外の要因も評価します

骨の変形が強い場合

大腿骨や脛骨に強い曲がり・ねじれを伴う場合、膝蓋骨周囲だけの手術では十分な整復が得られないことがあります。

必要な症例では、大腿骨や脛骨の矯正骨切り術を検討します。

前十字靱帯疾患との併発

成犬の膝蓋骨脱臼では、前十字靱帯疾患を併発することがあります。

突然足を着かなくなった、これまでより明らかに跛行が悪化した場合には、前十字靱帯の状態も評価します。

両方の疾患が存在する場合には、それぞれの病態を考慮して治療計画を立てます。

膝蓋骨脱臼のグレード分類

脱臼の程度は4段階のグレードで評価し、治療方針を考える目安にします

Grade 1軽度

指で押すと膝蓋骨が外れるが、手を離すと自然に元の位置に戻る。症状がみられないことも多い状態です。

Grade 2中等度

膝の曲げ伸ばしで外れたり戻ったりを繰り返す。時々後ろ足を上げる・スキップするなどの症状がみられます。

Grade 3重度

膝蓋骨が常に外れた状態で、指で戻してもすぐに外れてしまう。骨の変形を伴うことが多い状態です。

Grade 4最重度

膝蓋骨が常に外れており、指で押しても元の位置に戻らない。足を伸ばせず、歩行に大きな支障が出ます。

グレードだけで手術の要否が決まるわけではありません。年齢・症状・骨格変形・進行のリスクをあわせて判断します。

膝蓋骨脱臼の治療

年齢、症状、脱臼の程度、骨格変形をもとに治療方法を選択します

経過観察・保存管理

症状がなく軽度の場合には、経過観察、体重管理、運動管理などを行うことがあります。

軽度の脱臼でも、痛みや跛行が出る場合は再評価が必要です。

手術を検討する場合

  • 痛みや跛行を繰り返す
  • 将来悪化する可能性がある
  • 脱臼が重度である
  • 成長に伴う骨格変形が懸念される

「脱臼しているから手術」ではなく、その子の症状と将来のリスクを総合して判断します。

一頭一頭の状態に合わせた手術

脱臼の原因に応じて、必要な手術方法を組み合わせます

溝

滑車形成術

膝蓋骨が動く滑車溝を調整

滑車溝が浅い場合に溝を深くし、膝蓋骨が溝の中に安定して収まるようにします。

脛

脛骨粗面転位術

膝蓋靱帯の付着位置を修正

膝蓋靱帯が付着する脛骨粗面を骨切りして移動し、膝蓋骨が引っ張られる方向をまっすぐに整えます。

軟

軟部組織の調整

関節周囲のバランスを整える

緩んだ側の関節包を縫い縮め、引っ張りの強い側を緩めることで、膝蓋骨を支える力のバランスを整えます。

骨

矯正骨切り術

骨の曲がり・ねじれを矯正

大腿骨や脛骨の曲がり・ねじれが強い場合に、骨を切って角度を矯正し、プレートで固定します。

重要なのは、すべての患者さんに同じ手術を行うことではありません。
なぜ脱臼しているのかを評価し、必要な方法を選択します。

DISEASE
No.
03

前十字靱帯疾患・断裂

CRANIAL CRUCIATE LIGAMENT DISEASE

突然、後ろ足を着かなくなった——膝の前十字靱帯が原因かもしれません

前十字靱帯疾患は、
犬の代表的な膝関節疾患です。

犬では大きな外傷だけでなく、靱帯の変性が徐々に進み、日常生活の中で部分断裂から完全断裂へ進行することがあります。

靱帯損傷だけでなく、半月板・関節軟骨・関節炎・膝関節全体を評価することが重要です。

脛骨高平部水平化骨きり術(TPLO)が推奨されています。

正常断裂不安定性TPLO術後
正常・断裂・TPLOのレントゲン
正常断裂・前方移動TPLO

診断から手術、入院、術後の回復まで一貫してサポートします。

犬の前十字靭帯疾患とは

前十字靭帯疾患は、犬で非常によくみられる膝関節の病気です。

人ではスポーツなどによる強い外傷で突然断裂することが多いのに対し、犬では必ずしも大きな外傷が原因とは限りません。靭帯の変性が徐々に進行し、日常生活の中で部分断裂を起こし、やがて完全断裂へ進行することがあります。

前十字靭帯が損傷すると、大腿骨と脛骨の正常な位置関係を保つことができなくなり、体重をかけるたびに膝関節に異常な動きが生じます。この不安定性が、痛みや跛行、関節炎の進行につながります。

さらに、不安定な状態が続くことで半月板を二次的に損傷することもあり、前十字靭帯だけでなく膝関節全体を評価することが重要です。

当院では、前十字靭帯損傷の状態や半月板、骨形態などを詳しく評価したうえで治療方針を決定します。

外科治療が必要な場合には、現在、犬の前十字靭帯断裂に対する代表的な手術法であるTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)を中心に、その犬の状態に適した治療を行っています。

前十字靱帯の役割

膝関節の前後方向・回旋方向の不安定性を抑える重要な靱帯です

正常な前十字靱帯
  1. 1脛骨が前方へずれるのを防ぐ
  2. 2膝関節の過度な回旋を抑える
  3. 3膝関節を安定させる
損傷すると、痛み・跛行だけでなく半月板損傷や変形性関節症の進行につながります。

前十字靭帯は、膝関節の中にある重要な靭帯のひとつです。大腿骨と脛骨をつなぎ、歩行や走行、ジャンプなどで膝に力がかかった際に、脛骨が大腿骨に対して前方へずれることや、膝関節が過度に回旋することを抑えています。

前十字靭帯が正常に機能することで、膝関節は安定した状態を保つことができます。

この靭帯が部分的または完全に断裂すると、体重をかけるたびに膝関節に異常な動きが生じるようになります。その結果、痛みや跛行(足をかばう歩き方)が現れ、時間の経過とともに変形性関節症が進行していきます。

また、不安定になった膝では半月板にも大きな負担がかかるため、二次的に半月板が損傷することがあります。

そのため前十字靭帯断裂の治療では、単に痛みを抑えるだけではなく、失われた膝関節の安定性をどのように取り戻すかが重要になります。

なぜ切れるのでしょうか?

犬では単純な「ケガ」ではなく、靱帯の変性が背景にあることが多いと考えられています

関係すると考えられる要因

  • 靱帯そのものの変性
  • 年齢・体格
  • 肥満
  • 膝関節の形態

このような症状

  • 突然、後ろ足を着かない
  • 後ろ足をかばう・跛行する
  • 起き上がり直後に歩きにくい
  • 階段やジャンプを嫌がる
  • 一度良くなった跛行を繰り返す
  • 膝の内側が腫れてきた
片側を発症した犬では、将来的に反対側にも同じ疾患が起こることがあります。

前十字靱帯疾患の診断

部分断裂では明らかな不安定性が確認できないこともあり、複数の所見から総合的に判断します

整形外科的検査

歩様、筋肉量、腫れ・痛み、Cranial Drawer、脛骨圧迫試験

レントゲン検査

関節液増加、変形性関節症、骨形態を評価。TPLOではTPAを測定

関節鏡による関節内評価

前十字靱帯、半月板、関節軟骨、滑膜を拡大して直接観察

特に部分断裂や半月板損傷では、関節内を直接確認できる関節鏡が有用です。

前十字靭帯損傷の診断

前十字靭帯損傷は、完全に断裂している場合には膝関節の明らかな不安定性が認められることがありますが、部分断裂や慢性例では典型的な不安定性が確認できないこともあります。

そのため当院では、一つの検査だけで判断するのではなく、歩様や痛みの評価、整形外科的検査、レントゲン検査など複数の所見を組み合わせて総合的に診断します。

1整形外科的検査

歩き方や筋肉量、膝関節の腫れ・痛みなどを確認します。

さらに、前十字靭帯の機能を評価するためにCranial Drawer(前方引き出し試験)や脛骨圧迫試験を行い、膝関節に異常な不安定性がないかを詳しく調べます。

ただし、部分断裂ではこれらの検査で明らかな不安定性を認めないこともあります。

2レントゲン検査

レントゲンでは前十字靭帯そのものを直接見ることはできませんが、関節液の増加、変形性関節症、骨棘形成など、前十字靭帯損傷に伴って生じる変化を確認できます。

また、TPLOを検討する場合には、脛骨の形態を評価し、TPA(Tibial Plateau Angle:脛骨高平部角)を測定して手術計画に使用します。

3関節鏡検査

当院では手術の際に関節鏡を使用し、前十字靭帯と半月板の状態を直接確認しています。

関節鏡では、前十字靭帯が完全に断裂しているのか、一部の線維が残っている部分断裂なのかを詳細に観察できます。

同時に、前十字靭帯損傷に伴って起こりやすい半月板損傷、関節軟骨の変化、滑膜炎なども評価します。

特に部分断裂や半月板損傷では、触診やレントゲンだけでは判断が難しいことがあります。関節内を直接観察できる関節鏡は、正確な病態把握と適切な治療につなげるための重要な検査です。

正確な診断から、適切な治療へ

前十字靭帯損傷は、「切れている・切れていない」だけではなく、靭帯がどの程度損傷しているのか、半月板損傷を伴っているのか、関節炎がどの程度進行しているのかまで評価することが重要です。

当院ではこれらを総合的に評価し、それぞれの犬の膝の状態に適した治療方針を決定しています。

前十字靱帯疾患の治療

年齢、体重、活動性、損傷程度、膝関節の状態に応じて治療方法を選択します

保存療法

  • 体重管理
  • 運動制限
  • 鎮痛薬

症例によっては保存療法を選択します。

外科治療

膝関節の不安定性が強い場合や、活動性の高い犬では、外科治療によって歩行時の膝関節を安定させることを検討します。

代表的な治療:TPLO

犬の前十字靭帯断裂に対する当院の治療方針

犬の前十字靭帯断裂に対する外科治療には、いくつかの手術方法があります。その中でも現在、TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)は、特に中型犬・大型犬を中心に広く行われている代表的な手術方法です。

当院では、これまでの治療経験と現在の獣医整形外科の知見をもとに、前十字靭帯断裂に対する有力な治療選択肢としてTPLOを積極的に行っています。

TPLOだけにこだわるのではなく、その犬に適した治療を

前十字靭帯断裂の状態は、すべての犬で同じではありません。

犬種、体格、年齢、活動性、脛骨の形態、膝蓋骨脱臼などの併発疾患、靭帯の損傷程度などを総合的に評価し、必要に応じてTPLO以外の術式や追加手技を組み合わせます。

大切なのは「TPLOを行うこと」そのものではなく、その犬の膝関節の状態に合わせて、できるだけ安定した、痛みの少ない関節機能を取り戻すことだと考えています。

手術前には関節鏡で膝関節の中を確認します

当院では、前十字靭帯断裂の手術を行う際に、関節鏡を用いて関節内を直接観察し、前十字靭帯と半月板の状態を評価しています。

レントゲン検査などの画像検査だけでは、靭帯が部分的に残っているのか、完全に断裂しているのか、半月板に損傷があるのかを十分に判断できない場合があります。

関節鏡では、

  • 前十字靭帯の部分断裂・完全断裂の評価
  • 残存している靭帯線維の状態
  • 内側・外側半月板の損傷
  • 関節軟骨の状態
  • 滑膜炎などの関節内病変

を直接確認することができます。

特に半月板損傷の有無を正確に評価することは、術後の痛みや跛行を残さないために重要です。損傷が確認された場合には、その状態に応じて適切な処置を行います。

「前十字靭帯断裂」ではなく、その犬の膝全体を診る

当院では、単に前十字靭帯断裂という診断名だけで手術方法を決めるのではなく、関節鏡による関節内評価と、レントゲン・CTなどによる骨形態の評価を組み合わせ、その犬の膝関節全体を評価したうえで治療方針を決定します。

TPLOを中心としながらも、必要に応じてその他の術式や追加処置を組み合わせ、一頭一頭の膝に適した治療を行うことを当院の基本方針としています。

TPLO術前と術後の歩様

再生ボタンを押すと、実際の歩き方の変化をご覧いただけます

BEFORE
手術前歩行
AFTER
TPLO術後2.5ヶ月
DISEASE
No.
04

犬の椎間板ヘルニア

INTERVERTEBRAL DISC HERNIATION

胸腰椎と頚椎では、症状や手術方法が異なります

椎間板の内容物が飛び出し、
脊髄や神経を圧迫する病気です。

椎間板ヘルニアは、椎骨の間にある椎間板の内容物が脊柱管内へ突出・逸脱し、脊髄や神経を圧迫する病気です。

圧迫する場所や程度によって、痛みだけの症例から歩行困難・麻痺まで、さまざまな神経症状を起こします。

正常な椎間板のイラスト
正常な椎間板
逸脱した椎間板のイラスト
逸脱した椎間板

胸腰椎椎間板ヘルニア

後肢のふらつき・歩行困難・麻痺を起こす代表的な脊髄疾患です

胸腰椎では、逸脱した椎間板物質が脊髄を圧迫することで、背中の痛み、後肢のふらつき、起立困難、麻痺、排尿障害などがみられます。
神経症状が強い症例では、脊髄の圧迫を解除する外科治療が重要になります。

胸腰椎のMRI画像
胸腰椎のMRI画像

MRI検査による椎間板ヘルニア所見

片側椎弓切除術HEMILAMINECTOMY

胸腰椎椎間板ヘルニアで代表的な減圧手術です

脊椎の片側から椎弓の一部を切除して脊柱管へ到達し、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除きます。
脊髄を直接持ち上げるのではなく、側方から圧迫物質へアプローチできることが大きな特徴です。

ラウンドバーによる椎弓の切除
ラウンドバーによる椎弓の切除
椎間板物質の摘出
椎間板物質の摘出

頚椎椎間板ヘルニア

首の強い痛みから四肢の神経症状まで起こることがあります

頚椎では、首を動かしたがらない、下を向けない、抱き上げると痛がるなどの症状がみられます。

圧迫が強い場合には、前肢・後肢のふらつきや歩行困難など、四肢に神経症状が現れることもあります。

頚椎椎間板ヘルニアの犬
頚椎のMRI画像

ベントラルスロットVENTRAL SLOT

頚椎を腹側から減圧する代表的な手術方法です

首の腹側から頚椎へアプローチし、椎体と椎間板の一部に小さな窓(slot)を作ります。

その窓から脊柱管内へ逸脱した椎間板物質を摘出し、脊髄への圧迫を解除します。特に腹側に位置する椎間板物質に対して有効なアプローチです。

ベントラルスロット後、必要に応じて椎体にスクリューと骨セメントを使用して椎体固定を行います。

ベントラルスロットと頚椎椎体固定のレントゲン
ベントラルスロットと頚椎椎体固定

当院の椎間板ヘルニア治療

診断から手術、入院、術後の回復まで一貫してサポートします

椎間板ヘルニアは、同じ診断名でも圧迫部位や神経症状の程度は一頭一頭異なります。

当院では神経学的検査と画像所見をもとに病態を評価し、胸腰椎では片側椎弓切除術、頚椎ではベントラルスロットなど、病変部位に適した手術方法を選択します。

より精度の高い手術を行うために、当院では手術用顕微鏡を使用して椎間板ヘルニアの手術を実施しております。

ZEISS OPMI pico

手術用顕微鏡カールツァイス社製
ZEISS OPMI® pico
設備の詳しい説明はこちら

手術顕微鏡を使用した椎間板ヘルニアの手術
手術顕微鏡を使用した椎間板ヘルニアの手術
DISEASE
No.
05

犬の股関節疾患

HIP JOINT DISEASE

痛みや歩き方の異常の原因を見極め、病態に応じた治療を選択します

股関節は、大腿骨頭と骨盤の寛骨臼からなる関節です。正常な股関節では、大腿骨頭が寛骨臼に適合し、滑らかに動くことで後肢から体幹へ力を伝えています。

股関節にゆるみ、変形、炎症、脱臼などが生じると、痛みや跛行、運動量の低下につながります。

股関節疾患の診断

歩様・触診・画像検査を組み合わせて、痛みの原因を評価します

股関節の痛みと思われても、膝関節や腰仙部など別の部位が原因になっていることがあります。

当院では歩様、股関節可動域、筋肉量、疼痛、関節のゆるみなどを評価し、レントゲン検査を中心に骨形態や変形性関節症の程度を確認します。

必要に応じてCTなどの追加画像検査を検討します。

股関節形成不全

股関節のゆるみと不適合から、変形性関節症へ進行することがあります

股関節形成不全では、大腿骨頭と寛骨臼の適合性が低下し、関節に不安定性が生じます。

若齢期から症状がみられる場合もあれば、変形性関節症が進行して成犬・高齢犬になってから痛みが目立つ場合もあります。

症状や年齢、関節の状態に応じて、体重管理・運動管理・鎮痛治療・リハビリテーション・外科治療を検討します。

股関節形成不全のレントゲン
股関節形成不全のレントゲン
股関節形成不全の術中写真

股関節脱臼

外傷などにより大腿骨頭が寛骨臼から外れた状態です

交通事故や転落などの外傷によって起こることが多く、突然後肢を着けなくなる、強い痛みを示すなどの症状がみられます。

脱臼の方向、受傷からの時間、骨折の有無などを評価し、非観血的整復または外科的整復を選択します。

股関節脱臼のレントゲン
股関節脱臼のレントゲン
股関節脱臼整復後のレントゲン

大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス病)

小型犬の成長期にみられる代表的な股関節疾患です

大腿骨頭への血流障害により骨頭が壊死・変形し、股関節痛や跛行を起こします。

多くは若齢の小型犬で発症します。病変が進行して痛みが持続する場合には、大腿骨頭頚部切除術などの外科治療を検討します。

大腿骨頭壊死症のレントゲン
大腿骨頭壊死症のレントゲン

変形性股関節症

関節軟骨の障害と骨の変化により、慢性的な痛みや動きづらさを起こします

股関節形成不全、過去の脱臼や骨折などを背景に、関節炎が徐々に進行することがあります。

このような症状

  • 立ち上がりにくい
  • 散歩を嫌がる
  • 階段を避ける
  • 後肢の筋肉が落ちる

症状はゆっくり現れることがあります。

変形性股関節症のレントゲン

治療方法

保存療法から外科治療まで、年齢・体格・病態に合わせて選択します

保存療法

体重管理、運動調整、鎮痛薬、関節ケア、リハビリテーションなどを組み合わせます。

整復・関節温存手術

脱臼などでは、関節を元の位置に戻し安定化する治療を検討します。

大腿骨頭頚部切除術

痛みの原因となる大腿骨頭・頚部を切除し、機能的な偽関節形成を目指します。

その他の外科治療

病態・年齢・体格に応じ、より適した手術がある場合には個別に検討します。

大腿骨頭頚部切除術FHO

痛みの原因となる大腿骨頭と頚部を切除する救済手術です

大腿骨頭と寛骨臼が直接接触しない状態を作り、疼痛の軽減を目指します。

レッグ・ペルテス病、整復困難な股関節脱臼、重度の関節疾患などで選択されることがあります。

術後は周囲の軟部組織によって機能的な偽関節が形成されるため、適切な疼痛管理とリハビリテーションが重要です。

大腿骨頭頚部切除術のレントゲン
大腿骨頭頚部切除術のレントゲン
大腿骨頭頚部切除術後のレントゲン

大腿骨頭頚部切除術後の経過

術後の歩き方の変化を動画でご覧いただけます

当院の股関節診療

股関節だけでなく、後肢全体を評価して治療方針を決定します

後肢の跛行には、股関節だけでなく膝関節、足根関節、脊椎など複数の原因が考えられます。

当院では整形外科的検査と画像評価を行い、病態をできるだけ正確に把握したうえで治療方針をご提案します。

保存療法で管理できる症例から外科治療が必要な症例まで、一頭一頭の状態に合わせて対応します。

DISEASE
No.
06

犬の肘関節疾患

ELBOW JOINT DISEASE

前肢の跛行や痛みの原因となる代表的な整形外科疾患です

早めに原因を確認し、
状態に合った治療を選択することが大切です。

肘関節疾患とは?

  • 肘関節は、上腕骨・橈骨・尺骨の3つの骨から構成されています。
  • 成長期の発育異常や関節面の不適合、軟骨の障害などによって痛みが生じることがあります。
  • 慢性的な負担が続くと変形性関節症へ進行し、跛行が長く続くことがあります。
犬の肘関節のイラスト上腕骨橈骨尺骨
肘は複数の骨が組み合わさる複雑な関節です

代表的な肘関節疾患

肘関節には、成長期から成犬までさまざまな病気がみられます

肘関節形成不全(肘異形成)

成長期に生じる肘関節の発育異常の総称です。

内側鉤状突起疾患

尺骨の一部に障害が起こり、関節内の痛みや炎症につながります。

離断性骨軟骨症(OCD)

関節軟骨の発育に異常が生じ、痛みや関節炎を起こします。

肘突起癒合不全

成長期に骨の一部が正常に癒合しないことで症状が出ることがあります。

変形性関節症

関節の慢性的な変化により、痛みや動かしにくさが生じます。

犬の肘関節のレントゲン
変形性関節症の肘
変形性関節症の肘のレントゲン
変形性関節症の肘

このような症状がみられます

前肢をかばって歩く

片方または両方の前肢に跛行がみられることがあります。

運動後に悪化する

散歩や運動の後に跛行が目立つ場合があります。

肘を痛がる

肘の曲げ伸ばしを嫌がったり、触ると痛がることがあります。

活動性が低下する

散歩を嫌がる、遊ばなくなるなどの変化がみられます。

動きが硬くなる

起き上がりや歩き始めに動きがぎこちなくなることがあります。

診断と治療

症状や年齢、関節の状態に合わせて治療方針を考えます

診断

歩様や肘関節の動きを確認する整形外科検査とレントゲン検査が基本です。必要に応じてCTなどの精密検査を行います。

治療

体重・運動管理、鎮痛治療、リハビリテーションなどの保存療法から、病態に応じた外科治療まで選択します。

当院での診療

当院では犬・猫の整形外科診療に対応しています。必要な症例では関節鏡を用いて関節内を確認し、診断や治療に役立てます。

肘関節疾患は病名だけでなく、年齢・症状・関節炎の程度などを
総合して治療方針を決定することが重要です。

DISEASE
No.
07

犬の肩関節疾患

SHOULDER JOINT DISEASE

前肢の跛行や運動時の痛みの原因となる整形外科疾患です

症状や年齢、画像検査の結果から原因を確認し、
適切な治療を選択します。

肩関節疾患とは?

  • 肩関節は、肩甲骨と上腕骨から構成され、前肢を大きく動かす役割を担っています。
  • 成長期の軟骨の異常、腱や靭帯の障害、外傷などによって痛みや跛行が生じます。
  • 肩関節周囲には多くの筋肉や腱があるため、関節そのものだけでなく周囲組織の評価も重要です。
犬の肩関節のイラスト肩甲骨上腕骨

代表的な肩関節疾患

犬の肩関節では、関節軟骨だけでなく腱や靭帯の病気もみられます

離断性骨軟骨症(OCD)

成長期に関節軟骨の発育異常が起こり、痛みや跛行の原因となります。

上腕二頭筋腱の障害

肩関節周囲を通る腱に炎症や損傷が起こり、慢性的な跛行につながることがあります。

肩関節不安定症

靭帯や関節包などの支持組織が障害され、肩関節に不安定性が生じることがあります。

外傷・軟部組織損傷

転倒や運動時の負荷などにより、肩周囲の筋肉や腱を傷めることがあります。

変形性関節症

関節の慢性的な変化により、痛みや可動域の低下がみられることがあります。

犬の肩関節のレントゲン

このような症状がみられます

前肢をかばって歩く

歩行時に片方の前肢をかばう、着地を嫌がるなどの跛行がみられます。

運動後に悪化する

散歩や走った後に跛行が強くなる場合があります。

肩を動かすと痛がる

前肢を前後に動かした際に痛みや抵抗がみられることがあります。

運動を嫌がる

散歩や遊びを嫌がる、以前ほど走らなくなることがあります。

慢性的な跛行

軽い跛行が長期間続いたり、良くなったり悪くなったりすることがあります。

診断と治療

肩関節だけでなく、肘・頚部など他の部位との鑑別も大切です

診断

歩様や肩関節の動きを確認する整形外科検査とレントゲン検査が基本です。必要に応じて超音波、CT、MRIなどを検討します。

治療

運動管理、鎮痛治療、リハビリテーションなどの保存療法から、病態に応じた外科治療まで選択します。

当院での診療

当院では犬・猫の整形外科診療に対応しています。必要な症例では関節鏡を用いて肩関節内を確認し、診断や治療に役立てます。

肩関節疾患は原因によって治療方法が異なるため、
痛みの部位と病態を正確に評価することが重要です。

歩き方の異常や痛みでお困りの際は、
お気軽にご相談ください。

DISEASE
No.
08

成長期の整形外科疾患

GROWTH-RELATED ORTHOPEDIC DISEASES

成長板障害・成長板骨折・汎骨炎・橈尺骨の異時性成長

成長途中の骨には、成犬とは異なる特有のトラブルがあります。
「成長している途中だからこそ」早めの評価と、その後の経過観察が大切です。

成長期の骨には特有のトラブルがあります

  • 子犬・子猫の骨には、骨が長く成長するための「成長板」があります。
  • 成長板の障害や骨折は、成長とともに四肢の変形につながることがあります。
  • 成長期の跛行には、一過性の骨の痛みである汎骨炎なども含まれます。
  • 成長途中だからこそ、早めに原因を確認し、その後の成長を見ながら経過を追うことが大切です。

こんな症状に注意

  • 足をかばう
  • 歩き方がおかしい
  • 前肢が曲がってきた
  • 左右の足の長さが違う
  • 触ると痛がる

代表的な成長期の整形外科疾患

成長板障害

骨の成長が部分的に止まることで、変形が進むことがあります

  • 成長板の一部が正常に成長しなくなると、骨の長さや成長する方向に差が生じます。
  • 片側だけ成長が止まると、骨が曲がる・ねじれるなどの変形につながることがあります。
  • 成長が多く残っている時期ほど、その後に変形が進行する可能性があります。
  • 原因や変形の程度、残っている成長量を評価し、経過観察または外科治療を検討します。
ポイント

「今は少し曲がっているだけ」でも、成長に伴って変形が大きくなることがあります。

成長板骨折

成長期の骨では、成長板が外力に弱い部分になります

  • 転倒や落下、衝突などで成長板を含む骨折が起こることがあります。
  • 骨折の位置やずれ、成長板の損傷程度によっては、治癒後に成長障害が残る場合があります。
  • 関節に近い骨折では、関節面をできるだけ正確に戻すことも重要です。
  • 必要に応じて整復・固定を行い、治癒後も骨の成長や左右差を定期的に確認します。
治療後も確認

骨が癒合した時点で終了ではなく、成長が続く間は変形や脚長差が出ないかを確認します。

汎骨炎

成長期の犬にみられる、一過性の骨の痛み

  • 主に成長期の中型〜大型犬でみられ、突然跛行することがあります。
  • 痛む場所が変わり、別の足をかばうようになることもあります。
  • 多くは成長とともに自然に改善していきます。
  • ただし、成長板障害・関節疾患・骨折など別の病気でも似た症状が出るため、診察と画像検査で確認することが大切です。
治療

症状に応じて運動を調整し、必要に応じて疼痛管理を行います。

橈骨・尺骨の異時性成長

前腕をつくる2本の骨の成長速度に差が生じる状態です

  • 前腕は「橈骨」と「尺骨」という2本の骨で構成されています。
  • どちらか一方の成長が遅れたり止まったりすると、もう一方の骨との長さに差が生じます。
  • その結果、前肢の湾曲・ねじれ、手根部の偏位、肘関節の不整合などが起こることがあります。
  • 成長期には短期間で変形が進むことがあるため、年齢・変形・関節への影響をみながら治療時期を判断します。
早期評価が重要

前足が外側や内側を向く、左右で形が違うなどの変化があれば、早めの受診をおすすめします。

成長板骨折の分類(Salter–Harris分類)

成長板を骨折線がどのように通るかで分類します

Salter–Harris分類(ソルター・ハリス分類)I型〜V型の図

分類だけで予後が決まるわけではありません。骨折した部位、ずれの程度、年齢、残っている成長量、成長板の損傷程度などを合わせて評価します。

成長期の「歩き方がおかしい」を見逃さないために

  • 成長期の跛行には、自然に改善するものから、放置すると変形が進むものまであります。
  • 特に成長板が関係する病気では、治療のタイミングが将来の四肢の形や機能に影響することがあります。
  • 足をかばう、前肢が曲がってきた、左右差があるなど気になる変化があればご相談ください。

当院では、成長後の機能まで考え、必要に応じて継続的に画像評価を行いながら
治療方針を検討します。

歩き方の異常や痛みでお困りの際は、
お気軽にご相談ください。

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