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当院のワクチン接種プログラム変更について

当院のワクチン接種プログラム変更について

医療は日々進歩しており、今まで常識と考えられていたことが見直しされることも珍しくありません。これは獣医療にも当てはまり、特に近年では国内における愛犬、愛猫のワクチン接種について見直しがされてきております。
以前より、欧米では混合ワクチンに含まれる各病原体に対してのワクチンをコアワクチンとノンコアワクチンとに分類し、コアワクチンについては 3年目(2歳)以降のワクチン接種間隔を3年に1度にすることが一般的です。また、ノンコアワクチンはその伝染病に感染する可能性のある動物のみに接種することとされております。
近年さらにワクチンでの有害事象が問題視され、国内でもワクチン間隔の延長の是非が議論されてきました。近年になって国内の獣医学研究会や学会で様々な論文を根拠として、接種間隔の延長が提案されてきております。より詳細なワクチンガイドラインについては、世界小動物獣医師会(WSAVA)サイトでも閲覧できます。

https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

当院は、国内でのワクチン接種見直しの動向を鑑みて、世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインに則ったワクチン方法を採用することといたしました。

接種方法を簡潔にまとめると以下のようになります。

  1. 初年度(幼児期)は生後2ヶ月から4か月の間にワクチンを2〜3回接種
  2. 最終ワクチンの1年後に追加接種を1回実施
  3. 以降3年ごとの接種(中2年) すなわち、0歳、1歳、4歳、7歳、10歳...と接種します(最終接種年齢によって前後する)

昨年、当院で混合ワクチンを接種された方には、ワクチン延長を提案する内容のはがきが届きます。最終接種年から3年後の接種で結構ですので、忘れずにはがきを保管するか、予定表に記載しておいてください。
一方、ペットショップやトリミングサロンによっては毎年の5種以上のワクチンの接種を義務づけている所も少なくありません。その場合は、飼い主様とお店側とで良く話し合って、ワクチン接種を検討してください。当院からお店にワクチンについての指導などはいたしませんので、ご了承ください。飼い主様からのご希望があれば今まで通りに毎年接種もいたします。
なお、犬の狂犬病ワクチンについては日本国では狂犬病予防法により、毎年の接種が義務づけられております。狂犬病ワクチンは毎年接種してください。

コアワクチンについて

全ての犬・猫に接種すべきワクチンで、全国で発生している重篤な伝染病から動物を守るためのもの。
◎犬:犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス、犬パルボウイルス2型
◎猫:猫汎白血球減少症ウイルス、猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス1型

ノンコアワクチンについて

ワクチンで予防可能な病原体で、その病原体に暴露される危険性のある個体のみに接種するべきワクチンです。レプトスピラとクラミジアのワクチンは毎年接種が必要で、猫白血病ウイルスに対するワクチンは、3年ごとの追加接種が必要です。

ノンコアワクチンが対象とする病原体
◎犬:レプトスピラ、パラインフルエンザ
◎猫:猫白血病ウイルス、クラミジア

ノンコアワクチン対象の病原体に感染しやすい生活環境
◎犬:
・レプトスピラ〜川(当院の近所では多摩川、丸子川など)や山に行くことがある。キャンプに行く。ドックラン、犬の幼稚園やペットホテルなど不特定多数の犬と接触する機会がある。
・パラインフルエンザ〜集団飼育
◎猫:
・猫白血病ウイルス〜外に行く、ケンカをする、多頭飼育している。
・クラミジア〜多頭飼育している。

病原体についての説明

●レプトピスラ
病原体を保菌している動物はネズミです。ネズミの排泄した尿にレプトスピラが存在し、ネズミの尿に汚染された水や土壌から経口感染します。感染した犬の尿からさらに他の犬に感染します。
腎炎、肝炎を起こし、様々な症状を出します。人にも感染します。 単体ワクチンで予防可能です。

●パラインフルエンザ
咳などの気管支炎症状を呈します。感染している犬から犬に感染します。集団飼育環境で感染が起こりやすくなります。
単体のワクチンはありません。パラインフルエンザの含まれる混合ワクチンを選択することで予防ができます。

●猫白血病ウイルス
感染している動物との接触(ケンカ、舐めあい、交尾)などで感染するウイルスです。感染が成立すると、様々な感染症にかかりやすくなったり、貧血など造血機能の低下が起こります。
猫白血病ウイルス:単体もしくは混合ワクチン(毎年接種)

●クラミジア
密飼育下で感染しやすい病原体です。感染すると結膜炎や鼻汁、くしゃみなどが起きます。単体ワクチンはありません。猫5種混合ワクチンに含まれています。

春からはじめる予防接種

春からはじめる予防について

春は暖かくなるため、蚊やノミ・ダニが発生する時期です。特に蚊を媒体にして感染するフィラリアは、場合によっては死に至る恐ろしい寄生虫です。春からしっかり予防して、大事なワンちゃん、ネコちゃんを守りましょう。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
蚊・ダニ・ノミの発生
フィラリア予防薬
フィラリア注射 1月〜12月いつでも接種可能(1回の注射で1年間有効)
ノミ・ダニ予防薬

フィラリア

フィラリアは蚊によって媒介される寄生虫です。フィラリアは心臓に寄生し、様々な病気を引き起こします。

【予防方法】
蚊の発生した1か月後から、蚊のいなくなった1か月後まで、毎月お薬を飲ませます(5月〜12月)。今年から1回の接種で1年間有効の注射薬も出ました。投薬は蚊によって寄生したかもしれないフィラリアの幼虫を定期的に駆除することが目的です。

  1. フィラリアの感染がないか血液検査を行います。(犬のみ)
  2. 感染していないことが確認されたら、毎月1回投薬(駆虫)、または1年に1回の注射を実施します。

ノミ・ダニ

刺されときのかゆみだけでなく、アレルギーなど皮膚病の原因になるノミ・ダニは、ワンちゃん、ネコちゃん同士はもちろん、人へ被害が及ぶこともあります。予防の目安の時期は4月〜11月です。